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給食作りから学ぶ!梅雨時期に気を付けたいお弁当作りのポイント

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気温や湿度の変動が多くなるこの時期。料理を入れて持ち歩き、数時間後に食べるための家庭でのお弁当作りには何かと不安がつきもの。家庭で安心してお弁当作りができるように、保健所の指導、食品衛生法、公衆衛生法、学校給食法など受けて作られている給食の仕組みも参考にしながら「家庭でもおすすめの給食室の9つのノウハウ」やお弁当作りの「定番おかず」や「食材の取り扱いポイント」をお伝えいたします。

■安心のお弁当作りには、給食の衛生対策を知ることがおすすめのワケ

お弁当の衛生面で心配なことと言えば「作ってから料理が食べられるまでに、数時間かかる」「お弁当の保管環境がまちまちで温度管理が難しい」の2点ではないでしょうか。

実はこの2点と同じ問題点に様々なプロを交えて日々取り組んでいるのが「給食」です。

お昼ご飯を作っているところと言えば、レストランやカフェなどの飲食店もありますが、「給食作りのルールや仕組み」を知ると、実は類似した問題や条件があるため、常にそれに対して対策がとられて運営されていることに気づくことができます。

■給食作りのルールと仕組み

□当日調理が基本。前日仕込みはタブー。

レストランなどでは「冷蔵後で一晩寝かせて材料に味を染み込ませる」など通常の調理ですが、給食では衛生管理上、当日調理のみが許されており、前日仕込みはタブーとされています。また給食は食事時間が定められており、追加で作る事はできず、朝の一定時間のみが調理時間となります。

□作った料理が食べられるまで、時間が空いてしまう

レストランなどと違い、給食は作ってすぐにテーブルに出されて食べるわけでありません。例えば、保育園給食では園児の人数分の皿に盛り付けの時間も必要な場合がありますし、学校給食でも、クラスごとに分けられます。おかずはシルバーの食缶や汁食管に分けて、各ワゴンに設置し、運搬開始時間にはすぐに運び出せるようにスタンバイする必要があります。そういった作業時間分だけ、料理は作ってから食べられるまで、時間が空いてしまうのです。

□作った料理を直前まで冷蔵庫保存することが難しい

数百人分、学校によっては千人を超える大ボリュームを一気に作り、運び出せるようスタンバイするため、クーラーなどを効かせた屋内での温度管理は可能でも、直前まで冷蔵庫保存を行うことは、物理的に難しい場合もあります。

■同じ悩みを持つ「お弁当作り」と「給食」ならば解決策も近いはず?

給食の条件の「前日仕込みがタブー」は家庭で忙しい方なら同様でしょうし「作業時間が決まっている」「食べられるまでに時間が空いてしまう」「冷蔵後保存が難しい」などは、どれも(レストランなどの飲食店には当てはまらず)「お弁当作り」の環境と問題点比較的近いことが見えてきますね。

家庭のお弁当作りは「少量調理」と呼ばれる部類に入るので、菌の発生リスクについて、「大量調理」の給食ほどのリスクは高くないので、もちろん必要以上にナーバスになることはありません。 ですが、環境や心配点の似ている給食から家庭でも活かせる衛生対策のノウハウは様々あります。

■家庭でもおすすめの給食室の9つのノウハウ

□1.料理前のしっかり手洗い、指輪、バントエイドにご注意を

料理は「まずは材料から!」と思いがちですが、以外に盲点なのが基本的な料理前の手洗い、女性の場合は指輪などのアクセサリーやネイルなどをした長めの爪の管理、バンドエイドの有無です。忙しい朝、洗濯や朝の支度に追われながらのお弁当作りであればなおのことですが、ひと呼吸置いて石鹸で手洗いをしてみてください。

例えば調理不要なカマボコをお弁当に入れるとしても、清潔な手でいれてこそ安心なおかずになりますね。指輪は出来る限り外し、外せない場合にもよく洗うこと。

バンドエイドは「防水タイプなら料理中にも大丈夫」と思いがちですが、傷口から黄色ブドウ球菌が発生しやすいので、給食では(そもそも作業全般を食品専用のビニール手袋をつけて基本作業しますが)バンドエイドをつけたままの作業はタブーです。

ですが、例えば料理教室などでは、ネイルや外せない指輪などされている方には、ビニール手袋を付けることをお願いして「衛生的な料理」と「おしゃれ」の両方を楽しんでもらっているところもあります。家庭での料理の際にも一案ですね。

□2.要注意は「生焼け」「生食するもの」「生野菜」です。

お弁当を作るのに、目を皿のようにして全ての食材や料理をチェックするのでは疲れてしまいますが、大まかには給食の中でも加熱調理されるものは、比較的に安心できるものとされており、この考え方は家庭でも参考にできます。

大抵の菌は加熱によって死ぬことが多く、例えばO157の場合でも75℃以上で1分以上加熱する(または60℃以上で3分以上加熱)と死滅するので、この温度や時間はしばしば基準とされています。

そして、その加熱調理から除外されるもの「生焼け」「生食するもの」や「生野菜」ですから、この3つについては要注意と考えてチェックしていくことが大切です。

□3.お弁当の定番「鶏のから揚げ」「ハンバーグ」「卵焼き」は?

具体手にお弁当メニューで照らし合わせてみると…鶏のから揚げやハンバーグや卵焼きは中までしっかり火が通っていれば心配ありません。給食では赤外線や刺す温度計で中心温度が90℃を超えることを確認しますが、家庭では難しいので、から揚げなら大き目なものを一つカットして中まで火が通っている事を確認したり、ハンバーグなら透明な肉汁が出てくるまでしっかり加熱したりする事が有効です。出汁巻きの卵焼きもカットして中が半熟気味ならレンジで温めて加熱しましょう。

□4.生野菜、特に「果野菜、葉野菜」はよく洗う

給食室では調理する野菜は当然洗いますが、その中でも果野菜トマト、キュウリ、ナスにはカビの胞子が着いている場合が多いので要注意です。ナスは生食でお弁当に入れることは基本ありませんが、プチトマトやキュウリ、葉野菜のキャベツなどはお弁当に生で入れることが珍しくない食材です。

□5.トマト・プチトマト…ヘタは必ず外しましょう

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トマト、特にプチトマトは最もカビなどの菌が繁殖しやすい食品の一つです。しかし、彩りや手軽さからもお弁当の定番アイテム。

給食では保健所の指導にて、プチトマトは数百倍に薄めた(医療器具の消毒にも使用される)消毒液に一定時間漬けて洗い流し使用します。ですが、家庭では同様の作業や時間を持つのは難しいかと。家庭でも実施しやすいのは「水で洗うこと」。買ってきて冷蔵庫に入れる前に一度洗い流すだけでも減菌に。使う直前には、一番菌が繁殖しやすいヘタを取ってからよく水洗いすることが大切です。

□6.キュウリ…まな板に要注意

キュウリも同様に、給食ではスティックキュウリなどのメニューでは、ほぼそのままで食べられることもある野菜です。給食では同様に消毒液での消毒もしくはスティックキュウリなども、一度茹でて使うなどの熱湯消毒を行ってか調理が保健所より指導され実施されます。

家庭ではそこまで…という方には、使う前に流水でしっかり洗うこと、そして、まな板に注意しください。キュウリは板摺(いたずり)をして塩を馴染ませる調理法がよくつかわれますが、直前に生ものを調理していた、泥のついた野菜を扱っていた、などのまな板でそのまま板摺してしまうと、菌がキュウリに移ります。

給食ではまな板は「肉・魚専用」と「それ以外」でそもそも分けられていますが、家庭では1枚のまな板で料理している場合も多々あります。加熱調理による滅菌が期待できない生野菜を切る時、板摺する場合には特に、事前にしっかりと洗剤で洗ってから清潔なまな板で料理しましょう。

□7.キャベツ…生の千切りキャベツよりも、茹でたキャベツを

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千切りキャベツや、サラダなど、キャベツも加熱調理をせずに入れやすい野菜ですね。

給食では、熱湯消毒のために人茹でしてから千切りを行うことが多くあります。シャキシャキ食感の千切りではなくなりますが、やわらかな甘味が出て美味しいです。これも家庭でも取り入れやすい工夫です。(家庭ではレンジ調理を行うことも、同様の工夫になります。)

□8.お握り…塩での滅菌は迷信レベル?

給食でお握りが作られる場合には、決して素手では握りません。ビニール手袋などが必須ですが、これは人の手からご飯への菌移りを防ぐためです。昔から言われる塩での滅菌作用については、食べて美味しいと感じられる程度の塩加減では、残念ながら科学的には効力がほぼ期待できず、手からの菌移りには太刀打ちできません。

この時期は特に、家庭でも、同様にビニール手袋を使用して握るか、サランラップで握るのがおすすめです。

□9.新鮮な食材が安全に近いもの

菌の繁殖には時間が必要ですから、新鮮な食材を使い料理することは、何より有効な衛生対策です。(家庭では同様のことを徹底する必要はありませんが)給食では使う食材は当日納品されたものが原則、となっているのもそのためです。

家庭で冷凍したおかずをお弁当に使用する場合にも同様に気を付けたいことでもあります。冷凍したおかずは、お弁当に入れられて、保冷剤も兼ねることができてとても便利なものですが、冷凍庫といえどもタイムマシンではありません。

もし作ってから数週間経過した料理の場合は、この時期は無理に使わずに、思い切って処分することも、食べる人の健康を守るためには大切なことです。

ご飯、おかず…冷やす目安温度は?

「ご飯、おかずは、しっかり冷やしてからお弁当に詰めましょう。」とよく言われます。これはぜひ実践していただきたい有効な衛生対策ですが、具体的な温度目安はというと、例えば、ご飯は80℃以下の状態が2時間続くと菌の(セレウス菌、黄色ブドウ球菌など)繁殖が始まります。また菌は全判的に10℃以下では菌の増殖が遅くなる特徴があります。ですので、炊飯ジャーの保温は80℃以下にならないように設定されていますし、冷蔵庫は10℃以下に設定されています。保冷剤で冷やすのであれば、極力10℃以下を目指して保冷バッグや保冷剤などを使い冷やしていくことが望ましいのです。

お弁当の冷やし方は?

お弁当を保冷バックに入れる際など、保冷剤はどこに設置していますか?

保冷剤から出た冷気は、上から下に降りようとします。ですので、まず一か所目はお弁当箱の「蓋の上」です。ですが、お弁当の中身と蓋までの距離や空間が多い場合や、二段重ねのお弁当箱の場合には、(二か所目として)「お弁当箱の下」にも保冷剤をいれて容器から冷やすことも有効です。またお弁当箱横面に一か所だけ、保冷剤をいれることは効果が薄いので避けましょう。

■おわりに

「食べる人の健康を思って見えない菌に不安になる気持ちは、給食でも家庭でもきっと同じはず。」と、給食室で働いている頃に思っていました。環境の違いもありますから、もちろん給食ルールをそのまま全て家庭の中に持ち込むことはできません。ですが、そこで行われている有効な衛生対策を知ってみると、家庭で活かせるポイントも多くあります。無理の無い程度に取り込みながら、どんな時期でも、家庭でお弁当作りを安心してできるようになると嬉しいですね!

ライター:ふたば

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